柴田純一郎、LLM

Portrait of Junichiro Shibata

柴田純一郎

米国法法学修士
LLM for Foreign-Trained Lawyers (U.S. Law)

入学のきっかけ

私は当時、知的財産を専門とする事務所において、国際案件を中心に担当していました。日々、外国法を分析し、外国弁護士と協働する業務に従事する中で、特に英米法系の概念について「分かっているようで分かりきれていない」点に強い課題意識を覚え、体系的に学び直したいと考えるようになったことが、入学を志した一つのきっかけです。

もう一つのきっかけは、当時の実務を通じて資格取得を強く意識するようになっていたことにあります。自身の強みである国際法務を、今後どのように発展させていくべきか模索する中で、米国法を押さえることにより、その基礎にあるコモンローを通じて活躍の場が大きく広がるとともに、「英米法的思考を備えた日本人法曹」というユニークなポジショニングが可能になるのではないかと考え、入学を決意しました。

ロースクールでの学び

ロースクールでの学びの中で特に印象的であったのは、単に法律知識を教授されるのではなく、「なぜこのようなルールが必要なのか」を教員と問答しながら考えていくソクラテス・メソッドでした。先生とのやり取りを通じて、

  • どのような課題が存在するのか
  • 規範がなければ人はどのような行動を取るのか
  • その結果は社会にとって好ましいのか
  • 好ましくない場合、どのようにルール設計すべきか

といった点を常に考える思考習慣が身につきました。この思考回路は、特に契約書草案を検討する際に極めて重要なアセットとなっています。

勤務と並行して毎週大量のPre-readingをこなし、事前準備を行うことは決して容易ではありませんでしたが、限られた時間の中で多量の英文資料を読み込む経験を重ねた結果、要点や全体像を素早く把握する「斜め読み」のスキルが定着し、これも現在の実務における大きな財産となっています。

また、スキル面にとどまらず、ロースクールでは多様なバックグラウンドを持つ同級生と出会うことができました。在学中のみならず、卒業後もさまざまな場面でつながり続けることのできる、非常に貴重なネットワークを築くことができた点も、大きな収穫です。

Bar Exam

入学当初、私は法学部出身ではありませんでしたが、それがBar Exam受験において大きな障壁となるとは予想していませんでした。最初にワシントンD.C.で受験を申し込んだ際、「First Degree in Law」を有していないことを理由に申請を拒否され、続いてカリフォルニア州に申し込んだ際にも同様の理由で不受理となり、「試験を受けることすらできない」という状況に、挫けそうになったことを覚えています。

その後、日本において弁理士資格を取得し、改めてカリフォルニア州にAttorney Applicantとして出願しましたが、「当年から日本の弁理士によるAttorney Applicantは認めない」という方針変更を理由に再び拒否されました。試行錯誤の末、オンラインのJ.D.プログラムを受講することで要件を満たし、Temple卒業から5年目にして、ようやくカリフォルニア州の受験資格を獲得することができました。

受験資格を巡る過程があまりにも大変だったため、実際の受験勉強の苦労についてはあまり記憶に残っていません。「受験できるだけでありがたい」という気持ちで臨み、2度目のチャレンジでカリフォルニア州Barに合格することができました。

今後の展望

私は、知的財産事務所での勤務を経て、複数の米国エンターテインメント企業の法務部に所属し、現在は別の米国エンターテインメント企業の日本法人においてGeneral Counselを務めています。米国系企業の法務部においてキャリアを着実に積み上げることができた背景には、Templeで培った英米法的思考回路と、何よりも粘り強く取得したカリフォルニア州弁護士資格があると感じています。

また、会社勤務と並行して、TUJでは非常勤教員として教鞭を執る機会にも恵まれました。現役学生の皆様との交流を通じて新たな視点を得るとともに、自身の実務を客観的に振り返る貴重な機会ともなっています。

現在は、米国にとどまらず、より広く英米法圏で活動していきたいとの思いから、英国イングランド・ウェールズの事務弁護士資格も取得しました。今後は、日本や米国以外のフィールドにも積極的に目を向けていきたいと考えています。

おわりに

このように、Templeでは米国法の知識やBar受験資格の獲得にとどまらず、母国語・母国文化ではない環境の中で、自身を多面的に鍛えることができました。国際的な場面では、自らの主張を粘り強く、さまざまな方法を駆使して貫徹する力が求められますが、Templeはその素養を養うのに最適な場所だと感じています。英語力の向上やBar受験資格に少しでも関心のある方には、その先にある国際的な教養と視野の広がりにも、ぜひ触れていただきたいと思います。