一之瀬彩
米国法法学修士
LLM for Foreign-Trained Lawyers (U.S. Law)
フリーランスで会議通訳者(英語)をしている私がテンプル大学のロースクールに入学するきっかけとなったのは、プログラムの存在を知った長年の友人の勧めでした。大学でもっとちゃんと法律を勉強しておけばよかったと私が話したことを覚えていた彼女が、アメリカ法を英語で学べるテンプル大学なら、得意な英語を活かしながら法律の勉強ができるのではと、LL.M.プログラムのことを教えてくれたのです。
友人から話を聞いた後、早速ロースクールに連絡を取り、面談を申し込みました。面談ではプログラムコーディネーターの田中さんが対応して下さいましたが、田中さんの生き生きとした内容説明にすっかり魅了されてしまい、それが決定打となって入学することを決めました。
こんな経緯で、私は当初「学び直し」のつもりでロースクールに入りました。会議通訳者はゼネラリストであることが求められるため、法律分野に特化した仕事をしていたわけでもありません。入学時は自分の教養のためにアメリカ法を学びたいという一心で、アメリカの司法試験を受験する予定はなく、法学修士を取得できればそれでよいと考えていました。
入学後、仕事との兼ね合いで、受講するのは1学期1科目(週1回)と決め、ちまちまと勉強を進めていきました。テンプルではリーガルライティングの基礎的なところからみっちり教わるのですが、これまでそのような授業を受けたことがなかったので、とても新鮮でした。毎週提出する課題では、返ってくるたびに先生からたくさんの赤が入って四苦八苦しましたが、少しずつコツをつかんでそれらしきものが書けるようになっていくのは、とても楽しいプロセスでした。
どの授業もアメリカの弁護士資格を持つ先生方が教えてくださいますが、日本での駐在経験が長い方も多く、私たちには耳慣れない、ラテン語などを含む法律専門用語も分かりやすい言葉に置き換えて説明してくださいました。英語を母国語としない日本人にはどんな言葉や表現が分かりにくいのか把握し、それに対応して授業を進める先生方の語彙・表現の豊かさには目を見張るものがあり、英語をより深く知るという意味でも大きな学びがありました。
授業では分厚い教科書を毎週数十ページずつ読み進めねばならず、決して読みやすくはない英文を読み込むのは一苦労で、週1回しか受講していなくても仕事をしながらついていくのはとても大変でした。ただ、そうやって必死で頑張ったことが期末試験で良い結果につながると飛び上がるほど嬉しく、勉強をすることがどんどん楽しくなっていきました。
また、私が卒業した大学の法学部では卒論の提出が卒業要件ではなかったため論文を書く経験がなかったのですが、Guided Researchという科目で、ロースクールのディレクターであるサンダース先生の指導を受けながら、自分で選んだテーマのリサーチペーパーに取り組む機会を得たことも、貴重な経験となりました。
少しずつ自信がつき、アメリカの司法試験を目指すクラスメイトたちにも触発されて、自分もワシントンD.C. の試験を受けてみようかと本気で考え始めたのは、テンプルに入学して2年ほど経ったころでした。
LL.M.プログラムを修了するのに必要な単位を取得して卒業した後、ワシントンD.C.の試験を受けるために必要な単位数をそろえるため、暫くテンプルに通い続けました。テンプルでは試験対策講座も開講されているため、受験資格を得るのに必要な単位がそろった後はそれらの講座を2学期ほどの間受講し、市販されている司法試験対策教材と併せて試験勉強を進め、受験に至りました。そして幸いにも、1回の受験で合格することが出来ました。
テンプルの講座のみでの試験勉強ではありませんでしたが、後から振り返ると勉強に使ったリソースの大半はテンプルから提供されたものでした。また、試験対策講座を担当されていたサンダース先生からは「勉強計画を立てて自分の進捗に責任を持つこと」「エッセイの練習の際には自己採点を習慣づけること」と、口を酸っぱくして言われましたが、この2つを守ったことが合格の土台になったと感じています。
LL.M.プログラムで勉強する中で出会い、受験の際に励まし合える友人たちが出来たことも大きな収穫でした。年齢も仕事も立場も違う様々な人たちと知り合い、お互いに刺激を受けられる場は、社会人になるとそう多くはないからです。加えて毎年1月からの学期には、フィラデルフィア本校を含む全米のロースクールからのJ.D.生たちが日本に学びに来るプログラムが開催されており、アメリカで法曹を目指す学生たちと一緒に学ぶことができたのも得難い体験でした。
テンプルのプログラムの良いところは、それが法律を生業とする人々の更なる学びと挑戦の場として機能しているだけでなく、私のようにただ学びたいと思った人でも気軽に門を叩くことが出来る場であることだと思います。通うためには決して少なくない費用がかかりましたが、ロースクールでの学びは私にとって、これまでの人生で最高のリターンをもたらしてくれた最良の投資となりました。このご縁に心から感謝しています。
今後はテンプルで学んだことを活かしながら、自分の仕事に全力で取り組んでいきたいと思います。
アメリカ法の学習に少しでもご興味がある方は、ぜひロースクールにお問い合わせを。私がそうであったように、テンプルのプログラムの内容を知れば、きっとロースクールに入学したくなるに違いありません。新しい学びの世界に、一歩踏み出してみませんか。