学長室だより

学生とともに歩む

2018年12月13日

現在のキャンパスで迎える最後の年末が近づくにつれ、将来に思いを馳せ、過去を振り返りたいという気持ちが自然と強くなりました。私はいま大変満ち足りた気持ちで、その両方を同時に行っているところです。

22年前に現在のキャンパスへ私たちが移ってきた時、TUJの学長はリッチ・ジョスリンでした。以来、彼は米国本校の教養学部で教授を勤めており、そのジョスリン教授と私は、TUJの歴史に関する本を共同制作しています。1982年のTUJ設立から2000年代中頃までを彼が、2000年代中頃から現在のTUJについて、そして将来の展望を私が担当しています。この本が伝えるのは、TUJの歴史についてだけではありません。この36年にわたり、日米関係がどのように今日に至る私たちの在り様を形成してきたのか(そして、その関係性に、私たちが少なくとも何らかの影響を及ぼしてきたものと願うところです)、そして、日本における米国大学海外分校としてのTUJの発展が、どのように今日のグローバル化の優れた一例となってきたのか、についても語られています。

南麻布の現在地へ引っ越して以来、様々な変化がありました。一つは、TUJがより安定した事業体になったことです。ここ三ノ橋に所在地を置いて22年になりますが、それ以前の1982年から1996年の14年間で、TUJは4つの異なるキャンパスを経験したのです。また、現在地になってから、より多くの専攻学科と大学院学位を加え、TUJは教育機関としても成長しました。しかし、最も大きな変化は、学生母体の変化です。2005年、TUJは文部科学省より初の「外国大学日本校」として指定を受けました。この指定によりたくさんのことが起こりましたが、中でも学生ビザ取得の支援ができるようになったのは大きな出来事でした。つまり、これにより本学は世界中から学生を募集できるようになったのです。それまでは、TUJの学生は圧倒的に日本人、そして米国人という構成でした。

学内を散策しながら、来年の新キャンパスへの移転と共にTUJが向かうであろう将来をイメージする時、私に見えてくるのは学生の素晴らしい多様性、グローバルな特性です。過去42年間、私は日米の大学で仕事に就いてきましたが、TUJほどに多様で刺激的な場所は他にはどこにもありませんでした。その一因は、TUJが東京の真ん中に位置する米国大学であるということもあるでしょう。また、素晴らしい仕事で貢献してくれている、大変多様で刺激的な教員とスタッフも理由の一つです。しかし、この環境を作っている要素の大部分は、学生たち自身です。TUJの学生たちを見ていると、この世界の未来が見えてきます。というよりも、私が願うこの世界の未来と言うべきでしょうか。

世界60カ国以上から人を集めてお互いからごく近い距離で生活をさせ、ビジネス、経済、政治、芸術、宗教、社会的道徳観のようなトピックについて議論させれば、意見の相違は避けられません。私は討論や弁論によって新しい真理に到達する弁証法を固く信じています。私の描いているあるべき世界では、知的な争いが起こる時、またさまざまなアイデアが熱くあるいは冷静に議論される時、その最終結論はそれらアイデアがまとまってひとつになる異なる意見の融合体なのです。

しかし、これが起きるためには前提条件が欠かせません。それは尊敬、広い心、そして考えを改めることのできる力です。学期始めの新入生オリエンテーションでは常に、これと同じことを学生に話しています。他の国や文化、宗教、もしくは民族集団から来た人々と出会う時、彼らのすること、着るもの、食べるものやどのように行動するかについて、全てを好きになる必要はないのです。私たちは皆が人間で、聖人ではありません。どんな人も、それぞれが文化的、民族的、宗教的な生来の偏見を持っています。しかし、私たち全員がしなければならないのは、他者に敬意を払うことです。そして、なぜ彼らが異なる存在なのか、その違いがどこから来ているのかを理解する努力をしなければなりません。そうすることによって、私たちは周囲の世界について理解を深められるだけでなく、私たち自身について、そして、私たちの偏見がどこから来ているのかについて、より深く理解できるようになります。また、お互いに広い心で接することができるようにならなければいけません。世界から隠れることはできないのですから。他者に対して知的に挑戦するなら、自分自身に対してもそれを行う必要があります。私たちは特に、変化を受け入れ、未知と思える事柄を普通と捉え、異質なものにも価値を見出せるように、自分自身に挑戦していかなければなりません。

現代社会は、どうすれば互いに心を開いていられるかという問題に悩まされています。技術的グローバル化による問題が大きくなるにつれ、自分だけの安心な空間に引きこもりたいと皆が思っていることでしょう。しかし、それは不可能です。環境変化にしても、民族紛争にしても、貿易戦争あるいは政治的対立にしても、人の行動によって生じた地球上の問題から、私たちは隠れることはできないのです。

大げさだったり、陳腐に聞こえたらご容赦いただきたいですが、TUJの目的は、新しい世界に私たちを導いてくれる人々を教育することです。近い将来における苦闘の全ては、地球規模で世界を理解し、対処できるかどうかにかかってくるでしょう。私たちには、人を導く力を持ち、異なるアイデアや異なる存在に恐れることなく心を開ける人々が必要になります。私は、TUJが学生たちによってより明るく照らされた未来に向かって進んでいることを強く確信しています。