人間や文化を理解するためのヒントを探す

心理学者と聞くと、どのような人を思い浮かべますか?居心地のいいオフィスで、長椅子に横たわり悩みを打ち明ける患者と話をする優しい人物でしょうか?テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)心理研究学科の上級准教授兼コーディネーターを務めるスージー・K・ジマーマンも、このような雰囲気を持っているのは確かです。しかし、彼女のプログラムはカウンセリングに関するものではありませんし、彼女自身、カウンセラーでもありません。ジマーマンの専門は、小グループとグループの意思決定研究であり、最近では、学業成績に関係する心理学的要素に関する研究も行っています。

心理研究学科では、学生が人間の心理と行動を学ぶことで、心理学を幅広く理解することを目標にしています。カリキュラムには、認知、行動、感覚知覚、学習、神経科学、精神病理学、人間発達、社会的過程、組織など、心理学研究の主要な分野を紹介するコースが含まれています。また、異文化やアジア関連の問題は特に重視されています。

STEM分野

心理学は、STEM (科学、技術、工学、数学) の一分野です。心理学では、質問の作成、理論の構築、そして様々な手法を用いた綿密な実験など、科学的手法を用います。客観性、実証、再現性、予測可能性、テスト容易性が心理学研究の要です。そのため、ジマーマンはデータ管理スキルを重視しています。つまり、データのプランニング、収集、編成、統計的分析、解釈の技能です。学生は、統計的手法や、社会科学で最も広く使用されている統計解析ソフトウェアであるIBM SPSSやGNU PSPPなどを用いたデータ処理方法について学びます。

このプログラムでは研究に焦点が置かれています。学生は、研究プロジェクトを計画し実行するために必要な理論的知識を授業で習得します。また、インターンシップや教授陣との共同研究によって、実用的な経験を積む機会が提供されています。学生の時に行ったインターンシップや研究助手の仕事は、「研究スキルを向上させたり、心理学の基礎の多くを深く理解する上で役に立ちました」と、この夏に卒業したサバンナ・アダムスさんは述べています。さらに、彼女は、卒業後すぐに仕事をする場合でも、引き続き学業を続ける場合でも、これが役立つと考えています。

心理学は、定量的研究だけでなく定性的手法も用いて、新しい研究分野を探し出し、新しい質問を投げかけ、新しい仮定を設定します。統計的手法より厳密でないという側面はあるかもしれませんが、定性的手法は、コミュニケーション能力、観察力、パターン認識能力の発達には欠かせません。また、個別の事例を分析することで、主観的な観点を浮き彫りにし、個人やその行動、動機について理解を深めることができます。

異なる文化間と自文化内での違い

TUJの心理研究学科は、狭い専門分野を提供しているのではありません。その代わり、学生が将来カウンセリング、研究、教職、ビジネスのどの分野を選ぼうと、そのしっかりとした基盤となるような幅広い理論的、実用的なスキルと知識を提供しているのです。准教授のダリッシュ・スコブロインスキーは、コミュニケーションや社交性、自律的思考、柔軟なものの見方、議論を様々な角度から見て丁寧に説明できる能力などの「ソフト」スキルの重要性を語っています。彼は、これらのスキルを向上させるため、人々を混ぜ合わせるとことを好んで行います。「グループを作る時は常に、同じグループに異なる文化の人を入れて、お互いに他者から学べる環境を作るようにします」。TUJの学生の多様性のおかげで、このアプローチは非常に成功を収めています。

Photography by: Olga Garnova

TUJの心理研究学科のプログラムの特徴は、文化的差異とアジアに重点を置いていることです。ジマーマンが米国の多文化家族で生まれ育ったことから考えると、それも当然でしょう。彼女は米国で教育を受け、その後日本に移住しました。「母が日本から米国に渡り、私が逆に米国から日本に帰ってきたというのは興味深いことです」と准教授は語ります。異文化交流というのは、彼女の人生の重要な一部であり、彼女はその個人的な体験から得た見解を学生に語っています。

心理研究学科では、異文化・自文化の問題を扱う様々なトピックを学生に紹介しています。提供している授業には、「日本における偏見と差別」、「異文化結婚」、「心理学における異文化テーマ」「心理学のトピック:日本における臨床性科学」などがあります。さらに、学生は、異なるバックグラウンドを持つ人々の態度、行動、知覚の差異を探る比較研究も行います。例えば、ある授業のプロジェクトでは、学生たちが顔表情の認識実験を行いました。それは、実験の参加者にアジア人と白人の顔の画像をいくつか見せ、そこに現れている感情は何かを尋ねるという実験でした。

あらゆるキャリアに対応

心理研究学科の卒業生の多くは、素晴らしいキャリアを歩んでいます。木村雄一さん(2005年卒)のように日本のヘッドハンティング会社で働いている卒業生もいれば、佐藤陽子さん(2006年卒)のように言語聴覚療法の専門学校に進み、言語聴覚士になった卒業生もいます。言語聴覚士になった佐藤さんは、自分のビジネスを立ち上げ、言語や行動の問題を抱える未就学児や学生を助けています。彼女のサービスは今や東京で大変需要の多い分野です。「彼女はTUJの学生をインターンとして受け入れ、(心理研究学科の)プログラムに恩返しをしてくれています」と、ジマーマンは彼女のことを大変誇りに思っています。

最近卒業したジョシュア・デリエン・ディルベックさんは第二言語としての英語教員になることを望んでいます。彼はTESOLプログラムに入り、大学院や卒業後の仕事で、心理研究学科で学んだことを活用しようと計画しています。TUJで学んだ青年期における脳および精神の発達や、より一般的な人間の心理の理解は、将来、中学校か高校で自分が望んでいる仕事に就いたとき、非常に貴重なものになるであろうと彼は考えています。

ディルベックさんの友人グレゴリー・デイン・ハムリックさんは異なる道を選びました。彼の夢は、軍事心理学者になり、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)を抱える退役軍人を助けることです。彼は、TUJの教授陣やプログラムの質、多様性、柔軟性を高く評価しています。「良い教授がそろっています。…出される課題の多くは、自分が興味のある分野やこれからやりたいと計画していることに関連する研究です」。彼は臨床心理学に関する自分の興味を追求することができるので、軍事心理学者トレーニングプログラムのためにしっかり準備することができます。

私たちはしばしば、心理学を応用化学として考え、心理学者をセラピスト、ソーシャルワーカーやカウンセラーとして捉えます。確かに、多くの心理学科卒業生がこれらのキャリアを選択することも事実です。しかし、人間の心理と行動の科学としての心理学は、医療、教育、経済、犯罪、テロ、貧困など、社会が直面している課題を理解し、これに取り組むカギを与えてくれます。あなたが社会に貢献することを望んでいるのであれば、心理学はあなたに強力なツールを提供するでしょう。


執筆者: オリガ・ガルノヴァ(2017年卒業 コミュニケーション学科/アート学科同時専攻)