2009年、TUJは中期経営計画 English を策定しました。開校30周年がその折り返し地点にあたることから、中間報告および計画の最新版のハイライトを以下に要約しました。近年の重大事象を受け一部修正が行われましたが、その目指すところに変更はありません。それは、今日的課題と将来的課題に対処することにより、今から30年後も、今と同じように存在意義を持ち、活気に満ちたTUJであり続けるという目標です。

1. パートナーシップを育む

1. パートナーシップを育む

高等教育のグローバル化とはつまり、世界各国の文化・経済システムの関連が深まるにつれて、各国の教育ニーズが似通ってくることを意味します。TUJが日米はじめ各国の様々な機関との教育・研究上の連携をすれば、世界中の就労者に対してその必要とするスキルや能力を提供することができます。そこで私たちは、これまで日本内外の大学との連携を推進し、学生と教員のための教育・研究機会の相互拡大に努めてきました。

とりわけ、武蔵大学など日本の大学との提携は、日本における高等教育の国際化を支援することを目的としています。今後は、既存のパートナーシップを深化させ、デュアルディグリー制度創設などに取り組むとともに、互いの教育使命の実現に役立つような新たな提携先も開拓していきます。

海外との連携に関しては、先ごろテンプル大学米国本校とTUJ、そして韓国のセジョン大学の三者間で新たに連携協定が結ばれました。これは、テンプル大学が多国間・多大学間の合意を通じて高等教育のグローバル化を率先して進めていることの良い例と言えます。また、米国の高等教育制度の中でも重要かつ成長している分野であるコミュニティカレッジとの連携も、その教育プログラムの拡充と国際化を支援するための大切な手段であり続けるでしょう。

2. コアの教育プログラムを強化する

2. コアの教育プログラムを強化する

世界の変化、およびTUJの変化にあわせて、私たちの教育方針は絶えず見直されています。我々の教育方針は、常に意義あるものであり続け、かつ学生と社会双方のニーズに応えるものでなければならないからです。そのためTUJは、ここ3年の間に、いくつかの大きな教育プログラムの改定を行いました。例えば、学部課程のビジネス専攻は、学生の多文化認識やコミュニケーションの能力をさらに高めるべく再編されました。また日本語学科を開設したのは、日本で就職を希望する外国人学生の要望に応え、かつ企業の外国人採用ニーズに応えるためです。

今後の計画としては、より幅広い層の学生に向けた教育サービスを拡充していきます。現在、コンピューターサイエンスと医療情報管理において「2+2プログラム」を開発していますが、これはTUJで2年、米国本校に留学して2年、合計4年で修了する学部プログラムの第一弾です。コミュニケーション研究においては、「3+2学士・修士一貫教育プログラム」の開講も準備しています。これは、TUJで3年、米国本校2年、合わせて5年間の学習で両学位の同時取得を目指すものです。

2. コアの教育プログラムを強化する

大学院のカリキュラムにおいても、未来に向けた新たなイニシアチブが進められています。TESOL(教育学英語教授法)の修士・博士課程は、TUJの中でも特に歴史が長く、かつ成功しているプログラムであり、現在延べ1,500人以上の卒業生が日本各地で英語教育に携わっています。日本の教育制度のあらゆるレベルで良質な英語教育に対するニーズが高まっていますが、本課程はこれまでの実績を活かし、教職員向けの専門教育を通じて、そうした需要に応えていきます。またTUJは、米国大学として日本で唯一、TESOLの博士課程を提供してきました。米国本校との協力により、新たな博士課程を近日中にスタートさせる計画です。

TUJの法学修士課程 (ロースクール) は1993年に開校、以来18年にわたって法律専門家の教育を行ってきました。1996年にスタートした経営学修士課程 (MBAプログラム) も、企業の管理職や組織のリーダーを対象としたプロフェッショナル・トレーニングを提供してきました。いずれも、企業や就労者の変化するニーズに応え、また遠隔教育を可能にする情報技術の進展にもあわせて、プログラムの革新を続けていきます。

また、日本市場向けに設計された修了証書 (サーティフィケート) プログラムの開発や成人教育コースの充実も計画しています。たとえば、製薬業従事者向けの品質保証・規制関連プログラムなどが考えられます。

3.多様性を維持しながら学生数を増やす — テンプルを作るのは学生たち

東日本大震災までの10年間、TUJの学生数は着実に増加し、学生の多様化も進みました。この傾向は、2005年に文部科学省から「外国大学日本校」の指定を受けて留学ビザのスポンサーが可能となり、世界中から学生を募集できるようになって、さらに加速しました。

TUJの学部課程は現在、40%が日本人、40%がアメリカ人、20%がその他50以上の国籍で、バランスのとれた構成となっています。日本人が半数程度を占めるのが理想と考えていますが、リベラルアーツ教育にとって非常に重要である多様性は、これからも堅持していきます。この多様性とは、国籍や民族、文化的なものに限りません。年齢や経験の多様性も忘れてはならない要素です。それこそ私たちの授業を、活発で知的刺激に満ちたものにするからです。

多様性を維持しながら学生数を増やしていく — この目標はどうしたら達成できるでしょうか。私たちが提供する真のリベラルアーツ教育と、全卒業生 (とりわけ日本人学生) の高い就職率には相関があり、それが日本国内での学生募集においては強固な基盤となっています。一方、昨今の円高で日本への留学コストが上昇したことは明らかです。そこで、海外からの学生募集については、日本にある米国大学という部分に興味を持ち、円に対して相対的に強い通貨を持つ地域に注力していく考えです。

また、学部学生全体の10%は、復員兵援護法 (GI法) により米国政府から資金給付を受けている米国人学生です。大戦後、米軍兵士の多くが退役後も日本に残りました。日米友好関係のシンボルのひとつとも言えるGI法給付金受給学生を、TUJは今後も積極的に募集していく考えです。

母国政府から資金援助を受ける外国人学生が増えることも、TUJにとって恩恵をもたらします。最近の例では、サウジアラビアの高等教育省が、TUJで学ぶサウジアラビア人学生に、政府の全額給付奨学金への申請資格を与えることを正式に決定しました。

4. 企業のニーズにダイレクトに応える — 企業内教育プログラム

円高や不透明な国内の政治経済状況により、海外に業務を移転せざるをえない日本企業が増えており、また、輸入も増加しています。こうした中、日本企業にとって、英語で意思疎通できるだけでなく、海外の事情に通じ、様々な環境での仕事に適応できる社員を育成することがますます必要になっています。TUJは、この機会を逃さず、オーダーメイド型の企業内教育プログラムを拡充し、いま日本の多国籍企業で必要とされるサービスを提供していきます。

私たちはさらに、法人市場の枠を超え、日本のODAで実施される東南アジアの政府機関職員向け研修プログラムの提供者としても認められつつあります。こうしたプログラムの受注は今後も増えると予想されます。

5. コミュニティに貢献する

米国の大学はみなそうであるように、TUJも地域貢献に積極的に取り組んでいます。例としては、ボランティア活動の奨励、港区民大学などのイベントや生涯学習プログラムを通した地域住民への学びの提供、地域の小中学校教員の能力開発支援、緊急時対応の協力、などが挙げられます。私たちはこれからも、港区との長年にわたる協力関係その他のつながりを通して、地域における役割をさらに高めていきます。

東日本大震災の後には、TUJの学生・教職員の多くが東北地方でボランティア活動に従事し、また、米国本校ではJapan Relief Fund (日本救援基金) が設立されました。大学自らが地域社会において良き市民となることで、学生たちに範を示すことは重要と考えます。

6. 地盤を強化する — 法的な地位とキャンパスの向上

「外国大学日本校」の指定は受けているものの、TUJが日本社会に一層貢献することを妨げている障壁がまだ残っています。経営体が営利組織であるという法的立場のために、法人所得税や消費税の課税対象となっているほか、さらに、国際化拠点整備事業 (グローバル30) のような、日本政府の競争的助成金やプログラムに応募する資格がないのです。

TUJは、日本における正規の大学としての地位を獲得すべく努力してきましたし、これからも努力を続けます。その目標はもしかしたら、外国大学日本校を対象とした新たな大学区分が日本に誕生することで実現するかもしれません。こうした地位を獲得できれば、教育使命を果たすために必要な財政基盤の安定が得られ、TUJは日本の高等教育をさらに強力に支えていくことができるでしょう。

現在、TUJのキャンパスは3つのオフィスビルに分散しており、大学の活動や学生数に制限が加えられています。当面は、現存のスペースの再構成によって、学生や教職員のニーズに応えていくことになりますが、長期的には、学生のキャンパスライフを向上させ、教育上の全ニーズを満たすことのできる新たな場所への移転に向けて、努力を続けていきます。