コロナ禍のなかでのキャンパス。写真撮影:Dana Stribling

テンプル大学ジャパンキャンパス(東京都世田谷区/学長:マシュー・ウィルソン、以下TUJ)では現在、350名以上の外国人学生が日本政府の入国制限のため来日できずにいます。彼らはTUJのキャンパスで仲間とともに日本で学べる日を待ちわびながら、自国で時差を乗り越えつつ、オンラインで授業を受け、リモート学習に励んでいます。しかし、11月末、オミクロン株感染拡大防止を理由に外国人の入国が再び停止され、留学生の夢とその将来は不透明感が増しています。

TUJでは約1,500名の大学学部生が学んでおり、通常であれば約6割、コロナ禍であっても過半数が外国籍の学生です。1月初旬から11月初旬まで、留学生に対して国境は閉ざされていましたが、11月に入って入国緩和措置が発表され、数週間は入国申請が可能になり、一筋の光が見えたかのようでした。それでも海外からの学生の入国手続きは、政府の厳格なガイドラインのため非常にハードルが高くなり、文部科学省による事前審査が追加されたことに加え、在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility, 以下COE)の取得時期によって手続きが行われるという段階的な緩和措置でした。このガイドラインにより、2020年3月31日以前に発行されたCOEを保持している学生のみが、文部科学省の事前審査を11月に申請することが許されました。現在では文部科学省への申請書類の提出や事前審査表の発行自体も停止されています。12月20日時点で、TUJでは352名の学生が有効なCOEを発行されていながら申請手続もできないまま、日本国外で待機しています。2020年4月以降に発行されたCOEを保持している学生に関しては、入国の見通しはもちろん、事前審査の目途さえたっていません。

こうして入国停止が長期化すれば、日本への留学希望者は夢を諦めてしまいかねません。それは日本が将来の知日家・親日家育成のチャンスを失うことを意味し、日本にとって大きな損失につながることをTUJは懸念しています。実際に、TUJの外国人学生がどんな思いで来日できる日を待っているか、その声をご紹介します。

エミリー・ポッターさん(アメリカ)

日本語学科3年生。ニュージャージー州の別の大学から2021年秋学期にTUJに編入(2020年秋の予定をコロナの世界的パンデミックのため1年延期した)。本国からリモートで履修中。

「子どもの頃から日本の消しゴムを集めていて、高校時代は日本のテレビ番組や音楽を通して、ますます日本が好きになりました。私は日本に留学するだけでなく、日本に住み、日本中を旅して、できる限り多くの経験をしてみたいのです。まだ実現していませんが、何があっても私は絶対に日本に行きたい。

TUJでは日本語を専攻中です。読み書きも会話も流暢になって、将来は翻訳家を目指しています。でも、時差の中、リモートで受ける授業はたいへんです。ひとつのクラスが夜中12時に終わり、その次のクラスが午前3時からという場合もあって本当にハードでしたが、なんとかがんばっています」

タヘラ・ヴァジーヒさん(インド)

アート学科2年生。2021 年春学期にTUJ入学以来、インドのハイデラバードからリモートで履修中。

「高校でアートを学び、大学では海外留学したいと考えていました。日本を選んだのは、現代的な要素と伝統的な要素が融合した文化を持つ国でアートを学びたいと思ったからです。TUJ入学以来、オンラインで素描技術や現代日本美術、歴史の基礎などを学んできましたが、私の専攻は実習クラスがメイン。早く日本に行って、スタジオで自分の手を動かして学びたいです」

TUJマシュー・J・ウィルソン学長のコメント

ウィルソン学長は1989年の初来日以来、日本での自分の経験がどのように自分の人生に影響したかを振り返ります。ウィルソンはTUJロースクールへ留学し、また2003年から2009年にかけてTUJで勤務し上級副学長兼法律顧問を務めました。彼の日本での経験は、国際弁護士として日米間の橋渡しをすることに役立ち、その後もビジネス、教育の分野でリーダーとして国際的に活躍する機会をもたらしてくれました。

「私が19歳で初来日したときに得たようなすばらしい体験を、いまの学生たちにも提供したい。それが私の願いです。日本は、私という人間の土台、そして未来を築いてくれました。国際弁護士や教授をつとめ、米国の複数の大学で学長の責務を果たし、そしていま、再びTUJを率いているのも、すべて日本での経験がベースにあります。そしていまTUJ学長として、多くの人々がこうした体験を得る機会を提供したいと心から願っています。

 海外留学は、学生本人だけでなく、受け入れる国にとっても大きな価値をもたらします。現在多くの学生が日本をあきらめ、他国を選び始めています。日本を体験できる学生が減っています。安全第一ではありますが、日本は検疫はじめ入国の時点で厳しく検査、隔離などをすることによって、安全かつ効果的な形で海外からの学生を迎え入れる力があると思います。日本の未来のためにも、視野を広げて、学生の受け入れの再開を強く望んでいます。」

【テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)について】

米国ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるテンプル大学の日本校で、1982年に東京で開校しました。日本最大かつ最古の歴史を誇る外国大学の分校であり、2005年には文部科学省から初の外国の大学の日本校として指定をうけました。2022年に創立40周年を迎えます。約1,500名が在籍する大学学部課程のほか、大学院教育研究科(修士、博士)、ロースクール、マネージメント修士、アカデミックイングリッシュプログラム、生涯教育プログラム、企業内教育プログラムの7つのプログラムで、世界約60か国から多様な学生が学んでいます。コロナ禍の中、2021年の秋学期は対面、オンラインおよびハイブリッド方式で授業を実施しました。