テンプル大学ジャパンキャンパス
「世界人材」育成30年の歴史

2012年、テンプル大学ジャパンキャンパス (TUJ) は開校30周年を迎えます。開校以来TUJは、日本で最も長い歴史と最大の規模を誇る、代表的な外国大学として、他にはない教育や研究の機会を提供してきました。それを可能にしてくださった卒業生、在学生、保護者の方々、教職員、そのほかTUJに関わってこられたすべてのみなさまの支援に対し、深く御礼を申し上げます。

テンプル大学は米国ペンシルベニア州フィラデルフィアにある州立大学 (state-related university) です。日本が、終戦後30年間の奇跡の経済復興を経て国際的な地位を極めようとしていた時期に、日本校を開設することの重要性をアメリカの大学としてはじめて認めたのがテンプル大学です。それから程なくして、多くの米国大学が、日本の波に乗ろうとテンプル大学の例に続きました。しかし残念なことに、1990年代初めにバブルが崩壊してその波が砕けると、他の米国大学は日本から姿を消しました。

TUJは、学部と大学院を備えた米国大学の国外キャンパスとして唯一、1990年代の「失われた10年」から昨年の東日本大震災に至るまでの日本の困難を、日本とともに、日本の中で、また、いろいろな意味で日本のために、耐え抜いてきました。今日TUJが存続しているということは、テンプル大学の日本に対する、そして国際高等教育に対するコミットメントを示す証です。

長い年月を経てTUJは、唯一無二な教育機関へと発展を遂げました。私たちは、テンプル大学本校からは財政的に独立し、TUJとして直接学生を募集しながらも、テンプル大学の学士・修士・博士号を授ける教育機関です。また一方で、生涯教育やアウトリーチプログラムによって地域のニーズに応え、企業内教育プログラムを通じて各国企業のニーズにも対応しています。

世界的な趨勢に先駆け、TUJはかねてより、実用的なリベラルアーツ教育を伝統としてきました。学部課程のすべての専攻学科 — 日本語、国際ビジネス、コミュニケーション、アートなども含みます — において、リベラルアーツの哲学が貫かれているのです。TUJの使命は、生涯学び続ける姿勢/個人の責任感/深い理解/コミュニケーション力/論理的思考スキルといった特性や能力を、あらゆるリソースとリベラルアーツ的手法を駆使して、すべての学生に身に付けさせることです。それはすなわち、「良き市民 — Good Citizens」を育む教育です。

「良き市民 — Good Citizens」とはどのような人でしょうか。それは、自身が属する社会の中で個人が果たす役割の重要性を認識し、ゆえに自分自身を、自分が属する組織を、そして社会全体をより良くしていくため、優れた公共財を作り出していこうという気概にあふれた人を指します。こうした人材を育てることによってTUJは、経済競争力という意味でも、個人の幸せという意味でも、グローバル社会の発展に寄与しているのです。

他が追随するリーダー的な組織には二つの特徴があります。状況の変化に対応できることと、危機に直面して強くなることです。世界は今、大きな変化のただ中にあります。情報通信技術の革新が続く一方、グローバル経済の危機は一向に終わりません。だれもが新たな道を探し求めており、とりわけ日本は、変化する世界の中で居場所を見つけかねています。試練でもありチャンスでもある、そんな今こそTUJは、日本に貢献でき世界のニーズの変化にも応えられる国際高等教育機関として、模範を示して先導するべきだと考えます。

TUJには30年の経験に基づいた経営戦略があります。私たちは、範を示してリードするというこの目標を、日本のために、日本の中で、この先もずっと果たしていけるよう取り組んでまいります。

2012年1月

テンプル大学ジャパンキャンパス学長
ブルース・ストロナク