写真:ハワード教授

テンプル大学米国本校の教授であるアリスター・ハワードは2015年6月にジャパンキャンパス に赴任、上級管理職に着任し、政治学の教員を務めています。教務担当副学長として最高教務責任者(Chief Academic Officer)の地位にあり、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)の教員、教育、カリキュラムの質の管理を担当しています。当面の目標は、学生の学びそのものに主眼をおき、学問に卓越することが推進され、その努力が報われる”アカデミック・コミュニティー”の意識を学内に広めたいとしています。就任後の半年間は、優先事項として「学生や教員が希望や目標について語り、何が良くてどこに改善の余地があるかについて語る言葉に耳を傾けた」と語っています。

ハワード副学長は幅広い学究的経験を有しており、なかでも2つの分野が特に今回の職務に関連しています。第一に、高等教育における効果的教授法について多くの研究を重ねている点です。世界各地から集まる学生に教育を提供してきたTUJの長年の成功を受け継ぎ、発展させていくことに大きなやり甲斐を感じています。「これまで以上に今日の学生は、年齢、経験、国籍、ニーズの幅が広がっている。そうした学生の期待に応えるべく指導のスタイルや授業課題を採用していくことが重要」と、ハワード副学長は語ります。そして第二に「学生の学習度評価」の管理を経験した点です。学習度評価は、大学側が学部課程全体を通じて学生に何を学んでほしいかを描き出し、実際に学生がそれを学んでいるかの評価方法を探り出すものです。特定科目の成績評定という範囲を超えるため、この評価により何が成功していてどこが改善点なのか、教員や学生が判断できるようになります。

新たなプログラムや科目を導入

ハワード副学長は教務面でもいくつかの新たな取り組みの導入を考えています。まずは、科学、数学、工学分野の教科数を増やすことです。それには米国本校に更なる協力をあおぎ、日本の近隣大学とも連携を進める必要があるかもしれません。次に「カリキュラム全般を通して文章力を向上させる」という方針のもと、基礎に該当する「初年次論文演習」から、最終学年にそれぞれの専攻で開講される「シニアセミナー」まで、学生の文章作成力が確実に向上するよう促します。実現のためには、教員同士が連携し複数年かけて学生の文章力を伸ばす学習課題を設計し、継続して課すことが必要です。そのほかに、特に優秀な学生のために優等学位プログラムを設けることも考えています。

また、学生が学際的領域(複数の異なる分野に関わる学問)を専門として修了証書を取得する、新たなプログラムも奨励しています。修了証は主専攻と並んで学部の成績証明書に記載されます。例えば、2015年秋には政治学科と経済学科とが共同で実施する「政治経済学修了証書プログラム」を導入しました。政治経済学は学際的分野のひとつで、市場や政府が実社会でどのように機能するかを、グローバリゼーション、開発、格差、成長、ガバナンス(統治)といった重要な課題を踏まえながら学びます。このプログラムは学位取得を目的とする学部生が受講できます。ハワード副学長は導入にあたり「世界経済が大きな変革を迎えているこの時期に、TUJで最高峰かつ活発に研究を行う教員から学べるチャンス」としています。

テンプル大学米国本校とジャパンキャンパスの架け橋に

TUJに赴任するまで、ハワード副学長はテンプル大学米国本校の政治学科で15年間教鞭を執っていました。ジョージ・ワシントン大学の博士課程を修了後、2005年にテンプル大学で助教授に就任、2011年には准教授に昇任しました。2014年1月以降、いくつかの役職にも就いており、テンプル大学教養学部の評価ディレクターや政治学科の学部生アドバイザーおよびインターンシップ・コーディネーターを経験しています。また、大学の国際化や学生中心の教授法など自身の関心の高い分野で、テンプル大学の各種委員会にも参画しました。

ハワード副学長は、政治経済、比較政治、政治イデオロギー、公共政策の分野を専門に教えています。研究領域は、主にイギリスおよびアメリカを対象とした、自由主義的市場経済における資本主義の政治、国際比較論の政治などです。

大学院課程での教務経験としては、ペンシルベニア大学フェルス政策研究所で行政学を、テンプル大学経営学部で国際MBAプログラムの一環であるグローバルビジネスの規制について、またテンプル大学教養学部修士課程では「資本主義、アイデア、アメリカ合衆国の州」についての科目を担当しました。

イギリスで生まれて…

ハワード副学長はイギリス生まれで英米の二重国籍を持ち、これまで両国各地で暮らしてきました。イギリスの高等学校卒業後、オックスフォード大学のハートフォード・カレッジで哲学、政治学、経済学を学び、時に政治活動も経験しました。アメリカに戻り1991年には東京電力ワシントン支社に研究職を得て、電力業界や原子力に影響を与えるアメリカの政策および規制の発展について分析を行いました。この仕事が縁で、長年に渡り日本に興味を抱くようになり、また、組織が外国との接点からどのようなことを学ぶのかにも関心を持つようになりました。2人の子供のうち、一人は高校生、もう一人はTUJで学ぶ大学生です。ペンシルベニア州グレンサイドにある自宅では、築100年を超える家屋の手入れを行い、飼っている5羽の鶏、犬、猫の世話を趣味としてます。自転車愛好家であり、木工細工にも精を出し、さまざまなジャンルの音楽を楽しんでいます。

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