卒業生スピーチ(木曽友紀子 / 2013年卒業式)

木曽 友紀子

法学修士(LL.M.)

LL.M.プログラムの卒業生を代表して、ここでご挨拶できることを光栄に思います。私が修士課程を修了したのは昨年の6月でしたので、卒業式の招待状を受け取ったときにTUJでの経験を思い起こす時間が必要でしたが、このスピーチを準備しながら、たくさんの素晴らしい思い出がよみがえってきました。テンプルでの日々はとても大変でしたが、同時に刺激的な時間でもありました。ここにいる学生のみなさんと同じように、この歴史あるテンプル大学の卒業生の一人となれたことを大変誇らしく思います。

私は、2010年5月に、LL.M.プログラムに入学しました。当時勤めていた日本の商社の法務担当として、私は世界中の取引先との交渉に携わっていました。さらに、日常的に米英の弁護士とも業務を行っていたのですが、彼らの国の法律の基礎概念をよく理解しないまま、法的な問題を話し合わなければなりませんでした。私は日本語で日本の法律しか学んでおらず、その話し合いについていけなかったことを悔しく思っていました。それで、国際的な分野で法律の専門家としてやっていくために、TUJに入学することを決めたのです。LL.M.プログラムのほとんどの授業は夜間に開講されていたため、働き続けながら多くの知識とこの名誉ある学位を取得できるテンプルは、最適の選択でした。

学び始めてすぐ、このコースは想像よりはるかに厳しく、やりがいがあるものだと悟りました。私のようなネイティブスピーカーでない者は、英文テキストの読解にとても時間がかかります。この大量のリーディングの宿題に加えて、私が苦労したのは、日本の法律の基礎となる成文法とは異なる、慣習法の考え方を理解することでした。慣習法では、まず過去の判例を分析し、それらの先例を個別の事案に適用しなければなりません。これは、成文法とは完全に異なる考え方です。初めの頃は、この新しい方法に慣れることに奮闘しました。

今もなお、財産法のクラスで古い事例について教わったときのことを思い出します。それは狐を追う二人の猟師の論争についてでした。一人の猟師が狐をつかまえようとした直前に、もう一人の猟師が横から入って捕まえてしまった。猟師は二人とも狐は自分のものだと主張する。狐の所有権を主張できるのはどちらか?

私は、現代社会からかけ離れたこんな古い事例に、なぜ教授がそれほど時間を割くのかわかりませんでした。しかし後になって、この有名な事例の学習を通して、事実を分析する方法や、関連する先例を目の前の事実に適用する方法が理解できました。実際2002年に、前年のバリー・ボンズのシーズン本塁打記録となったホームランボールの所有権をめぐる裁判で、この1805年のケースが使われたそうです。

TUJでの日々を通して、私は多くの素晴らしい学友に出会いました。最初の頃は、グループワークの時間が苦痛でした。自信がなくてうまく自分の考えを述べることができなかったのです。しかし、何度も繰り返すうちに慣れ、他の学生の考えから多くを学べること、ディスカッションは問題を理解するのに有効なことがわかりました。クラスメートはみな責任のある職務についていたので、仕事に全力を尽くしつつ、すべての宿題をこなし、終業後にクラスに来て、試験の準備をすることはとても大変だったでしょう。しかし、みな志が高く、教室の内でも外でも違う分野の考え方をもちよって活発に議論しました。TUJを通して、私は多くの友人をつくり、法律実務家のつながりを広げることができました。

素晴らしいプログラムのほかに、TUJは転職の機会も与えてくれました。日本人として、製造業は最も働きがいのある産業のひとつと考えていたので、日本のメーカに勤めたいと考えたのです。現在勤めている会社の面接の際、面接官はTUJのLL.M.プログラムに大変興味を示していました。後から聞くと、私が採用されたのは、国際法務の経験が豊富だったことに加え、自己啓発を続けていたからだったそうです。TUJのおかげで、私は現在、日立製作所の法務担当として、日米の法知識を駆使し、契約業務のアドバイス、製品事故やM&Aに関する課題解決を行っています。

最後に1分間だけ個人的なことをお話する時間をください。なにをおいてもまず、TUJは私の人生を変えました。TUJでの初日、確かオリエンテーションの日でした。そこで私は1年後に夫となる男性に出会いました。彼も今日、卒業生としてここに参列しています。彼の支援と協力なしでは、プログラムを修了することはできませんでした。彼にお礼を言わせてください。伊織さん、ずっと支えてくれてどうもありがとう!

私たちの知る限り、私たちはTUJのLL.M.プログラムで初の夫婦です。ここで出会い、ともに学び、栄えある今日をともに迎えられたことをとても幸運に思います。