学長室だより

TUJのグローバル市民育成

2014年9月10日

2014-15学事年度の始めに学長室だよりを書くにあたり、とりわけ重要な二点を挙げます。第一に、早期にTUJが教育機関として非課税措置を受けられるよう、米国本校、日本の文科省、日本政府、国会議員、また多くの民間のTUJサポーターと協同で、あらゆる努力を尽くしているということです。これは今春の消費税増税に伴いTUJにとって特に重要な課題ですが、日本にとっても大きな意味があると思います。日本の高等教育は激烈な国際化と改革の時代に突入しており、TUJを支援くださる方々は私たちがその改革において重要な役割を担うことができる、また、担うべきであることをよくご存じだからこそご支援くださっているのです。

昨今TUJは日経、朝日、NHKをはじめ日本のメディアから少しずつ注目を集めるようになっています。それは、日本で運営される外国大学としての役割が、米国本校とその学生や教員の活動を支援するだけでなく、日本の高等教育を支援するものだからです。TUJの二重ミッションの2つの要素であるアジアのゲートウェイとして米国本校を支援することと、日本の高等教育の改革、国際化、グローバル化の支援は、相互に補強しあいます。過去1年の間に、TUJは日本と他のアジアの国にある複数の大学と連携協定を締結しています。12月には宮城大学、4月には香港バプティスト大学と東洋大学、5月には明治大学と国立台北大学と協定を結びました。これらの動きはアジア社会の高等教育において連携の基盤を構築する私たちのコミットメントを明示するものです。セオボルド総長、戴(ダイ)プロボスト両名とも、テンプル大学発展のための重要分野として国際化を挙げており、これらTUJによるイニシアチブはその方針を支援するものです。

第二に挙げるべき重要な点は、国際関係において解決困難な課題が山積していることと、それら課題の幅の広さと複雑さについてです。世界には常に危機や困難な課題が存在します。しかし、25年経過した今、私たちは冷戦終結の結果発生した国際関係のシステムに根本的な変化を見るに至っています。中国は新興国としてその力の及ぶ範囲を試しています。ロシアは衰退国として、ソ連崩壊以来影響力を失っていた旧支配地域で再び権威回復を企てています。両国は今なお超大国として健在する米国に対抗するという点で利害をともにしますが、イラクやアフガニスタンで証明された通り、東西冷戦、中立国に世界が分かたれていた時代のように国際関係を支配できていません。これらは政治的、経済的争点に過ぎません。真にグローバルかつ全人類的な問題である気候変動、水不足、文化・宗教的衝突、グローバル・コミュニケーション革命の是非にまで目を向けると、さらにことは複雑になります。

例を挙げればきりがありませんが、私が言いたいのは、政治的、文化的、環境的、経済的景観はグローバル・コミュニケーション革命と同時に、そして、ある意味そのおかげで、変化し続け、世界はより複雑な一方でより緊密になっていくということです。私たちは以前と比べお互いをよりよく知るようになりましたし、世界中どこにいても瞬時にお互いとコミュニケーションがとれるようになっています。離れていても緊密にコミュニケーションが取れることで生活はずっと便利になりましたが(38年前私が米国の家族と週に一回1ページの航空便で手紙を書いていたのを思い出します)、何の拘束もなくフィルターを通らないコミュニケーションが混乱を招く可能性もあります。実際、ソーシャルメディアについての調査研究の一つによると、自分が「いいね」と思う人たちの意見だけを聞いて、それに反対する意見には耳を貸さない集団をつくる傾向があるそうです。

TUJの存在意義は、他者とコミュニケーションする能力を持ち、問題の賛否両方の意見に耳を傾けたうえで自身の意見を形成することのできる「良きグローバル市民」を世に輩出することを目指して努力していることにあります。TUJは東京にある米国大学ですが、日本と米国だけでなく、世界のために役立ちたいと考えています。TUJでは55か国以上から集まった学生が少人数のクラスで混ざり合い、それぞれの違いを超えてお互いにコミュニケーションをとり、良好な関係を築いていくことを学んでいます。これがTUJの本質であり、米国本校を中心としたテンプル大学の一員として、また日本にある高等教育機関の一つとして、私たちが重要であることの所以です。TUJが目指すのは、アメリカ人でも日本人でもなく、TUJで経験したのと同じ国際的なコミュニケーションと理解の精神を生涯持ち続けるグローバル市民を育てていくことです。