学長室だより

日本の大学改革とテンプル大学ジャパンキャンパス ― 教育機関としての新しい地位は?

2013年6月25日

6月9日の卒業式にあわせて、テンプル大学米国本校からセオボルド総長、戴海龍(ダイ・ハイラン)プロボストをはじめとする7名の代表団が来日しました。セオボルド総長はこの1月に就任したばかり。シオナ夫人とともに初来日でした。総長来日は、いま急速な展開を迎えつつある日本の社会と大学制度改革の流れの中にテンプル大学ジャパンキャンパスの使命を位置づけるために、格好の機会となりました。

40年間日本を間近に見てきた私は、日本で変革を起こすのは非常に難しいという意見を正しいと思います。日本は調和を重んじ、緊張を嫌う社会です。変革について語ることは調和を崩し、変革の実行は緊張を生みます。したがって、変革の議論にもその進め方にも長い年月がかかります。しかし、ある時点でいわゆる臨界点に達し、改革は突然始まります。臨界点という表現に沿えば核爆発のようなものです。

日本の大学改革について、まさにこれが当てはまるでしょう。改革・国際化についての真剣な議論はかれこれ10年以上も続いてきましたが、ここに来て本当に勢いがついてきました。この数ヶ月の間に、首相官邸や自民党の政務調査会や文部科学省から、企業の新卒採用スケジュール見直しやTOEFL採用を含めた大学入試改革、秋入学の推進など、改革を後押しするステートメントが次々と出されています。

日本の大学制度についに本格的な変革のときがやってきた理由はいくつかありますが、最大のものは、大改革をしなければ世界を舞台に戦うための能力が著しく阻害されるという危機感でしょう。高等教育の改革は文科省の所管でありながらも、改革のドライブはむしろ自民党政府や経済産業省から来ているのは、そのためです。戦後の大学制度は、日本経済が内向きでよかった時代に企業が求める人材育成には成功しました。しかし、1990年代に世界経済のグローバル化が加速し、高度経済成長時代のようなやり方は世界で通用しなくなりました。当時の貿易は一方通行で、モノもサービスも大して輸入せずに済んだ時代、また外国人や外国の文化に対して門戸を開くこともなかった時代です。

今日の世界競争力は、大企業だけでなく中小企業に対しても、他国の経済とそれを支える人と文化を理解し、わたりあっていく能力を求めます。だからこそ、日本の企業の多くが、広い視野をもち、海外経験がある、または外国語を操る人材を採用しているのです。ここで本学に言及しないわけにはいかないでしょう。本学の就職率は90%以上を維持しており、学内企業説明会への関心も高まっています。

7月21日は参議院選挙の投票日です。衆院で圧倒的多数を占める自公政権は、今回参院でも過半数を握るだろうと、大方の識者は予想しています。そうなれば、安倍首相は「アベノミクス」として知られる成長戦略をさらに加速させるでしょう。大学改革を通じて世界的競争力を高めるというのは、その主要な政策のひとつですから、現政権が両院で過半数を達成すれば、大学の改革・国際化はさらに進むでしょう。

テンプル大学ジャパンキャンパスは、日本で最も歴史が長く、学部から大学院まで提供する最も規模が大きい外国大学です。文科省指定「外国大学日本校」の第一号でもあります。したがって、文科省や政府と協力し、外国大学日本校が学術面で本国本校の傘下にあり続けながら、日本において非課税の教育機関として認められるよう、その新しい地位を模索する動きのなかで、本学が重要な役割を担っていることは当然のことといえます。そのような地位が新設されれば、本学学生は学費にかかる消費税という経済的負担から解放されます。その意義はもちろん大きいのですが、おそらくそれよりも重要なことがあります。それによって本学は、日本政府、文科省そして他の大学にとって真のパートナーとなり、日本の大学の国際競争力を高め、日米の大学関係を強化し、テンプル大学のアジアにおけるキャンパスとしてその使命を深化させることができる、ということです。