学長室だより

日米文化教育交流の要としてのテンプル大学ジャパンキャンパス

2013年1月21日

少し遅くなりましたがあけましておめでとうございます。楽しい冬休みを過ごされたことと思います。

学生の出身国が約60カ国にのぼるテンプルジャパンは、誇りをもって真の「国際的な大学」を標榜しています。しかし同時に、我々はあくまで米国大学の在日キャンパスであり、日米の学生が4割ずつ合計8割を占めていることからも、その存在が日米関係の文脈の中にあることは明白です。私はこの半年ほど、テンプルジャパンにおけるこの「日米関係」の側面について、とりわけ多くの考えをめぐらせてきました。日米文化教育交流会議(通称カルコンCULCON)が昨春発足させた教育タスクフォースのアドバイザーとして、日米間の文化・教育面での密接なつながりをどう維持していくか、討議に参加する機会をいただいたからです。

日米関係は、大戦後の世界における二国間関係の中で最も興味深いものです。お互いに非常に友好的な姿勢が何十年も続いているのです。これは1970~80年代の貿易戦争のときも不変でしたし、ときどき在日米軍基地の問題がクローズアップされても変わりません。二つの国家が互いに国民レベルでの好意的な態度を保ち、外交・軍事・経済面でも協力的関係を維持するというのは、明らかに直観に反する事実です。20世紀の著名な国際関係学者カール・ドイッチュによれば、国家間連携は、似通った言語・歴史・宗教など文化的な部分で根っこがつながっているときに最も強固で長続きするということです。民族国家時代の同盟の歴史を見れば、ドイチュのこの主張はおおむね正しいといえますが、日米同盟だけは例外でしょう。真珠湾攻撃、東京大空襲、広島・長崎への原爆投下からあまり時間が経たないうちに、日米関係は急速に改善しはじめ、占領軍が去った後も60年間、その関係がさほど冷えこんだことはないのですから。

日米間のこうした友好関係は、文化交流の歴史の上に築かれたものです。特に戦後、それぞれの国民が互いの国で教育を受けたことは重要な役割を果たしました。占領軍による統治時代、二百万人近い米国人が来日しましたが、彼らの多くは日本での日々を楽しんだだけでなく、帰国後に政府の学費補助制度を利用して日本について学ぼうという気持ちになったのです。同様に、政界・経済界で大きな影響力を持った日本人の中には、米国で学んだ人が少なくありません。

最近は米国人学生の興味は中国に移り、日本への関心は相対的に低下した、と思っている人が多いようですが、実はそうではありません。在日米国人留学生の数は、1996-97年度の2千人から2009-10年度には6千人まで増加しました。東日本大震災直後は4千人まで減ったものの、今またその数は増え始めています。つまり、米国人学生は「ジャパン・パッシング」ではなく、日本へも中国へも同時に関心を深めている―つまりアジア全体への興味が高まっているといえます。

しかし一方で、米国に留学する日本人学生の数は、2001年の4.6万人から2011年の2万人へと、10年で半分以下に減ってしまいました。政府も教育界も経済界もみな、これを日米関係の未来にとって由々しき事態だと考えています。手を携えて東西冷戦を乗り切った記憶、長年の戦争の後に有益で平和的な関係を構築するために共に努力した思い出―両国の今の若い世代にとってこれらは遠い昔の話になってしまったようです。

米国留学だけでなく海外留学全体が減少しているなか(2005年8.3万人→2010年6万人)、日米文化教育交流会議タスクフォースのテーマは、日本人学生の米国・海外留学を再び増加させるにはどうしたらよいか、ということです。日本の若者にはモチベーションが足りないという人もいます。未知のものには挑戦したくない、日本で就職する機会を逃したくない、海外留学にお金を使いたくない…など。どれも真実かもしれませんが、真の問題は日本の若者にあるのではなく、日本の組織・体制にあるのです。日本の大学も文科省も、海外留学希望者への支援策を拡充すべきです。また大学に入るより前の段階で、海外留学の動機づけをする必要があります。さらに、企業も政府も現在の雇用慣行を改め、海外経験者を採用することのメリットを見出さなければなりません。そして米国大学は、日本人学生が米国で勉強しやすい経済的環境を整える必要があります。

テンプルジャパンは、日本において学部から大学院まで運営する唯一の米国大学・外国大学であり、日本人学生が米国式大学教育の恩恵を受けやすくすることを通じて、日本の教育国際化を支援する重要な使命を担っています。我々が日本の高校・大学、そしてテンプル大学米国本校と連携して運営する教育プログラムは、「国内留学」の機会を提供すると同時に、テンプルのフィラデルフィア本校を含む米国大学への留学準備をサポートしています。ジャパンキャンパスの存在が日米関係の教育・文化面において重要な役割を果たしていることは、テンプル大学にとっての誇りであり、日本の高等教育国際化の進展とともにテンプルジャパンの役割も拡大し続けるでしょう。