学長室だより

就職・留学・奨学金について

2011年3月3日

先月2月18日の朝日新聞のオピニオン面に、私の拙稿が掲載されました。日本の大学の国際競争力の欠如と大卒者の就職難について論じたものです。これらの問題とあわせて、日本企業が外国人の採用を増やしていることも、最近たびたび報道されています。ここで私が強調したいのは、国籍を云々するのはもう意味がないということです。日本人を減らして外国人を増やすといった話ではなく、要するに、日本の大学の卒業生には社員に必要な資質が見出せないという認識を日本企業が強めているということなのです。日本の大学の平均と比べてテンプルジャパンの日本人学生の就職率が高い理由は、ここにあります。

経済のグローバル化と日本経済の構造変化にともない、人材育成のあり方も当然変わってきます。過去に社員教育に注いでいた時間と費用は減り、企業は社員に、明日から外国人と共に働いたりビジネスができる能力を望んでいます。日本の大学がこれらのスキルや能力を身につけた学生を輩出しているかといえば、残念ながらまだまだと言わざるを得ません。大学が企業の変わりゆくニーズを満たすことができないため、企業は外国人を採用するようになるのです。

私は投書の中で、リベラルアーツ教育における留学とインターンシップの重要性を訴えました。留学を通して、学生は自分と異なる人々と交流したり彼らを理解をする方法を学びます。また、インターンシップは職務知識を得たり人脈をつくる場であるだけでなく、大学と企業が意思疎通するチャネルとして重要なメカニズムのはずです。願わくばこの二つを統合して、さらに発展させるべきだと私は考えます。単位取得ができる留学先でインターンシップを行えれば理想的な"一石二鳥"でしょう。

しかしながら、大学間に協定が結ばれていない場合、日本の大学生にとって海外留学は難関となります。留学先の学費は通常、日本の大学よりも高額だからです。ここテンプルジャパンでは外国人学生はいわば4年間ずっと「留学」しているわけで、状況は少しややこしいのですが、いずれにせよ、在籍する大学も留学先の大学も、テンプルジャパンを含むすべての大学は、留学を希望する全学生への経済的支援をもっと強化すべきでしょう。

テンプルジャパンの外国人学生が面している目下の困難は、円高です。ドル建て換算では、この3年間に学費はおよそ30%も値上がりしました。この状況を受けてテンプルジャパンでは、奨学金のさらなる拡充を検討しています。メリットベース(学業優秀者向け)よりも、特にニーズベース(経済的支援の必要のある学生向け)の奨学金です。さらに、新入学生向けの奨学金は維持しつつ、在学生向け奨学金の拡大も考えています。現在、Board of Overseers(理事会)そのほか外部の関係機関とともにこれに取り組んでおり、じき良い知らせを皆さんにお伝えすることができると思います。

最後に、個人的な話になりますが、3月初めの雨は、私が冬の東京をどれだけ愛しているかを感じさせてくれました。空はいつも晴れていて、気温はいつも10度前後。完璧です。コントラストは常に物事をよりクリアにしてくれるので、今年は例年よりも少しばかり良い年だったように思います。テンプルジャパンでの冬は、史上最悪とも言える冬を迎えたフィラデルフィアにある米国本校のものとは対照的でした。フィラデルフィアでは、クリスマス以降、7つの大きな嵐が発生し200センチの積雪があったそうです。嵐が原因で、本校では朝の始業時刻を遅らせたことが今年は数回ありました。過去にはあり得なかったことです。本校には37,000人以上の学生と6,000人の教職員がいます。始業時刻を遅らせたり、ましてや休講にするなど、どれほど難しい決断か皆さんは想像できますか?