学長室だより

New Year, New Students

2010年10月6日

米国大学のアカデミックカレンダーは9月から始まります。テンプル大学ジャパンキャンパスでも9月初めからの秋学期が順調にスタートしました。今学期、テンプルジャパンに直接出願した新入生の数は150人を超え、過去最高となりました。あまりに多かったので、新入生オリエンテーションを2回に分けたほどです。既存の学生も含めると、秋学期に履修登録したジャパンキャンパス直接出願の学生数は758人で、前年同期と大差ありません。ただし、米国本校からの短期留学生は63人と、昨年の秋より30人ほど減ってしまいました。これはひとえに急激な円高の影響と考えられます。一方、大学院課程の学生数は前年同期と同レベル(308人)を維持しました。

今学期の学部生の国籍別内訳を見ると、これまでと異なる点がひとつあります。日本人と外国人の比率は50:50が理想と考えているのですが、今学期は日本人学生の比率が約45%まで下がったことです。なお外国籍の内訳は、米国が35%で、残り20%はクック諸島、モンゴル、サウジアラビア、スウェーデン、ミャンマーなども含む、51カ国・地域となっています。

前アカデミックイヤーにおける大きなイベントとして、ジャパンキャンパスを含むテンプル大学全体の、米国中部教育認定協会による審査がありました。10年に一度の大掛かりな審査で、認定を維持できるかどうかが判定されるものです。この審査は無事終了し、テンプルはめでたく認定を維持することができました。私が付け加えたいのは、審査委員会の報告書の付記でジャパンキャンパスへの訪問審査について述べているのですが、その中に「テンプル大学はジャパンキャンパスの存在を誇りとする正当な理由がある」と書かれていることです。このコメントに当然、私は心から賛同します。

今年度は、新しいプログラムやプロジェクトの展開が予定されています。いちばん重要なのは、日本語学科(専攻)の開設でしょう。米国本校の教養学部には日本語マイナー(副専攻)しかないため、本校との綿密な調整が必要で、導入までには長い時間がかかりました。しかし、我々の地理的条件および学生の構成やニーズを考えれば、テンプルジャパンにとって日本語学科は必須と言えます。この新しい学科はそれ自体でも重要な意味を持ちますが、さらに国際関係や国際ビジネスといった他分野を専攻している学生に対しても、ダブルメジャーの機会を提供します。外資であれ内資であれ日本国内で働きたいなら、プロフェッショナルレベルの日本語能力は大きな資産となるはずです。

また、テンプルジャパンはこの11月、提携関係にある武蔵大学が独立行政法人学生支援機構(JASSO)と共催する「国際シンポジウム」に協力することになっています。日本の大学以外の教育機関がこの大会議の開催に関わり重要な役割を果たすのは、初めてのことです。

米国大学の海外キャンパスは多くありますが、学部から大学院まで揃え、学生の募集から卒業までを担う「フルサービス」の海外キャンパスとしては、テンプル大学ジャパンキャンパスが、ほぼ最大といって差し支えないでしょう。そうしたユニークな存在としてテンプルジャパンは28年という歴史を持つのです。世界中の大学で国際高等教育の重要性の認識が高まる中で、これは誇るべきことです。

この安定性が特筆に価するということは、最近の米国の高等教育機関の動向を見てもわかります。数ヶ月前のニューヨーク大学やエール大学の発表に見られるように、大規模な新計画が打ち出される一方、2008年に始まった金融危機の影響で、多くの大学で海外プログラムが閉鎖・中止に追い込まれているのです。とはいえ、高等教育の国際化は必然の流れです。高等教育専門誌「クロニクル」によれば、国境を越えて移動する学生の数は、15年後にいまの3倍、800万人に達すると見込まれています。

日本の高等教育が面している大きな問題のひとつは、地球規模でボーダーレス化が進む中で、日本人の若者が海外で学ぼうという意欲を失っているように見えることです。この10年で、日本で学ぶ外国人留学生の数は大きく増加しました。日本政府はさらに、現在13万人の留学生を2020年までに30万人に増やす計画です。これはこれで日本社会にいろいろな恩恵をもたらすでしょうが、受け入れる留学生の数よりも、もっと多くの日本人学生が海外へ出て学ぶべきなのです。自分のホームグラウンドの中で外国人と交流するのも結構ですが、実際に異国の地に住み、異なる文化に晒される経験は、もっと強烈な学習体験をもたらします。残念ながら、日本人の海外派遣留学生の数は伸びていません。他の国では海外で働いたり外国に住んだりすることを志向する若者が多いのに対し、日本の若者は内向き・安全志向、国内で安定した仕事につき、それを守っていくことだけで満足しているようだ、と社会学者の多くが指摘しています。

高等教育機関の重要な使命のひとつは、社会における公共財を創造することにあります。その意味で、テンプルジャパンは日本社会において、重要な役割を果たすことができます。文化的共感力、異文化コミュニケーション力、もちろん英語力も含めて、ふつうは外国に行ってはじめて学べるようなスキルを、日本にいながら身につけたいと考える日本の若者に対して、私たちはチャンスを提供できるからです。そして願わくば、ここで多言語・マルチカルチャーな環境を経験した学生の中からは、実際に海外へ出て勉学を続けたいと考える人も出てくることでしょう。テンプル大学米国本校を含めて、その選択肢は無数に用意されています。